恩師の霊にお返し申すのだ」 兎角が苦笑した
!」 たがいに絶叫をほとばしらせて突撃し合った。 二人の木刀が噛み合った転瞬。 小熊の木刀が、宙にはね飛[#「はね飛」に傍点]んでいた,オークリー サングラス 激安。 だれの眼にも、次の瞬間には、兎角の一撃を受けた小熊が橋上に倒れ伏す光景が映ったといってよい,オークリー 店舗。 だが、人びとの予感は外れた。 わが武器が、わが手からはね飛ばされたとき、岩間小熊は、そのことにいささかの衝撃もうけぬような自然さで、ためらうことなく猛然として、兎角の長身へ組みついていったのである。 兎角は……小熊の木刀をはね飛ばし(しめた!!)とおもったが、こちらの木刀が長いだけに、一歩下って打ちこみを入れた。それほど両人の間合いはせばめられていたのである。 その一歩の後退が、小熊につけこまれた,オークリー アウトレット。 見物の喚声があがったとき……。 根岸兎角は、岩間小熊の双腕に抱え上げられ、橋のらんかん[#「らんかん」に傍点]を越え、川の中へ投げこまれていた。 川面に水しぶきがあがった。「怪力、恐るべし」 見ていた徳川家康が驚嘆してやまなかったといわれる。 ともかく、兎角は負けた。 |公《おおやけ》の試合だけに、さすがの兎角も、川から這い上って来て、「小熊。わしの負けじゃ」 くやしげにいった。「兎角。盗んだ伝書を返せ」「ほしいのか」「おれがほしいのではないぞ。恩師の霊にお返し申すのだ」 兎角が苦笑した。「何が、おかしい?」「返す。だが中を見ておどろくなよ」「何を……」 やがて、兎角は、神田台の自邸へ小熊をともない、故諸岡一羽斎の秘伝書一巻を小熊へわたした。 そして、「さらば。わしはもう二度と、江戸の土をふむまいよ」 根岸兎角は、部屋から出て行き、編笠に顔を隠し、徳川の士や多勢の門人の視線が集中する中を、恥かしげに身をすくめ、すごすごと何処かへ立ち去ったのである。 小熊は、恩師の伝書をひらいて見た。 表書の〔一羽流秘伝〕の文字は、まさに、見なれた一羽斎の筆蹟であった。 ひらいて見て、「や……?」 小熊は|瞠《どう》|目《もく》し、さらに巻物を解くと、一瞬手を震わせて、「う、うう……」 愕然とうめいた,オークリー ゴーグル。 一巻の秘伝書は白紙であった。一語の文字もしたためられていない。 そこへ、坂山伝蔵が廊下へあらわれ、平伏をした。 小熊はあわてて伝書を巻きおさめて、「何だ,サングラス オークリー?」「はっ。おそれながら……」「何だというのだ?」「本日の立ち合い、われらとくと拝見いたし、おどろき入りましてござる」「ふむ」 悪い気もちではなかった。大手前へすわりこんでいた自分のところへ、兎角の使者として来たときの坂山伝蔵の高慢な態度は、いまの彼のどこにもない。 坂山伝蔵は畏敬をこめた眼をおそるおそる小熊へ向け、両手をつき、「申しあげます。本日より、われら一同、御門下の列へお加えいただきたく、ひたすら御願い申しあげます」 また、平伏をした。 いつの間にか、廊下へあらわれた兎角の門人たちが同じようにひれ伏し、「御門下へお加え下されたし」 と、声をそろえた。 このとき……。 岩間小熊の胸の中に、強烈な感動が生まれた。 天下|人《びと》の豊臣秀吉さえ、一目をおくほどの江戸城主徳川家康の家来たちが、この門人たちの中に多い。 根岸兎角に代り、自分が江戸随一の剣客の座についたという実感が現実のものとして、小熊の感動をよんだのである。「おりゃ、江戸崎へ帰らねばならぬのだ」 と、はじめは承知をしなかった小熊を、坂山伝蔵がたくみに引きとめた。新築が成ったばかりの旧根岸兎角邸へとどまり、兎角の残していった立派な衣服を身につけ、かつて口にしたこともない食物や酒の美味に酔い、ふくふく[#「ふくふく」に傍点]した夜具にねむり、多勢の門人たちにかしずかれて、うかうかと日を送っていれば、当然、木刀をとって道場へも出るし、門人たちを教えることにもなる。 そうなれば、門人の数も知らぬ間に増えてゆく。師としての責任も生まれる。 小熊の名声は、日毎に高まっていった。 この年が暮れようとするころ、江戸崎の土子泥之助が門人?|棒《ぼう》|谷《がい》|戸《ど》八郎を江戸の小熊のもとへよこし、「おぬしが、江戸において根岸兎角を打ち破ったことは江戸崎にもきこえ、大へんな評判だ。本当にうれしくおもう。ついては、一度、こちらへ帰ってはもらえまいか。道場のことについても談合をしたい。また秘伝書一巻は首尾よく取り返せたろうか。返事を待っている」 手紙で、そういってよこした。 一読した小熊は、「八郎。お前が見る通り、おりゃ、いますぐに江戸をはなれるわけにはゆかぬ。門人も多勢おってな。わかるか、わかるな、よし」 ひとりでうなずき、あの白紙の秘伝書一巻を箱におさめて封をし、「これを泥にわたせ。わたせばわかる」 と、八郎へわたした。 棒谷戸八郎は、不快の表情をかくそうともせず、伝書を抱いて江戸崎へ帰って行った。 翌、文禄三年正月。 岩間小熊は、堂々と〔神道一羽流〕を称し、正式に道場の主となった。 四 その女が、小熊の屋敷前の道に倒れ、もがき苦しんでいたのは、二月に入って間もなくの或朝のことであった。-------------------------------------------------------?mod=viewthread&tid=240328&pid=324633&page=1&extra=page=1#pid324633
?mod=viewthread&tid=14909&pid=59495&page=11&extra=page=1#pid59495
?mod=viewthread&tid=14206&pid=248341&page=22&extra=page=1#pid248341
プレート状に加工して、看板、標識などの材料に使う
スキャンダルでP商事をやめた形跡はありませんか」「懲戒免職になったのならともかく、ふつうは退職の事情なんかくわしく記録されないからね。杉本こずえは依願退職、理由は自己都合だ。これだけではなにがあったか、見当もつかないよ」 礼をいって島崎は人事部をあとにした。思案をめぐらせながら化学品部へ帰った。 杉本こずえはむかしP商事の社員だった。直属の責任者が高田浩介だった。その一人息子の健一がいま「ムーンリバー」に出入りしている。健一は古い馴染《なじ》みだとこずえはいっていたが、高田親子とこずえにはそれ以上に深いつながりがあるのではないか。ひょっとするとP商事時代、こずえは高田浩介の愛人だったのかもしれない。 その日は夕刻から化学品第二部の部課長会議がはじまった。七時半に会議が終った。オフィスへもどってみると、高田健一が一人で残業をしていた,オークリー 店舗。めずらしいことだった。彼に担当させたアクリル樹脂の一種の開発が順調にすすみそうな気配なので、意欲にかられはじめたのかもしれない。「ご苦労さん。一区切りついたらビールでも飲みにいかないか」 島崎は声をかけた。まだ健一と二人きりで話しあったことがない。 二つ返事で健一は了承した。いそいそと机のうえをかたづける。 二人は外へ出た。タクシーで銀座八丁目へ出る。ビルの五階にある、島崎のいきつけの酒場へ入った。 とりあえずビールを注文した。二人とも夕食は会社で出前で済ませている。「例のアクリル樹脂ですが、看板、標識用のルートが快調なんです。K工業所の現地法人の製品がなかなか好評なものですから」 ジョッキをふれあわせたあと、たかぶった声で高田健一は報告した。 そのアクリル樹脂は、P商事の系列の大手化学会社の製品である。プレート状に加工して、看板、標識などの材料に使う。台東区のK工業所へP商事は樹脂を卸し、プレートに加工させていた。そのプレートをK工業所の子会社である香港Kへ輸出し、看板、標識などに二次加工する。それを日本へ逆輸入すると、低価格でユーザーへ売ることができた。香港Kは健一が企画し、P商事が資金を出して設立させた,オークリー サングラス 激安。最近そのプロジェクトが軌道に乗りかなりの利益があがっている。「春さきに香港へ出張して、現地の事情をくわしく調べたのが良かったんです。課長に出張をみとめていただいたおかげです」 気弱そうにまばたきして健一はいった。 島崎が一課の課長になってすぐ、健一は香港出張を願い出てきた。くわしく事情がわからないまま、島崎はOKを出した。健一のやる気を削《そ》いではならないと思ったのだ。お坊ちゃまが消極的な性格で、戦力にならないという噂はさんざん耳に入っていた。「なによりだったな。このへんで一旗あげないと、お父さんの手前もある。いつまでも息子が芽を出さないと、次期社長の威信にかかわるということがあるから」 すなおに島崎は祝福した。 じっさい健一には一人前になってもらいたい。島崎の指導力が、次期社長の高田浩介に高く評価されることになる。健一が島崎の課長の座をおびやかすまでに成長すれば、自動的に島崎にも部長の目が出てくる。課長と課員はもちつもたれつなのだ,サングラス オークリー。「五年計画でプロジェクトを組もうじゃないか,オークリー ゴーグル。きみは実績をつんで課長になる。おれは押しあげられて部長になる。それが目標だ。おたがい、助けあっていこう」「ほんとうですか。よろしくお願いします。すばらしいプロジェクトですね。親父が社長でいるあいだに、ぜひ——」 ありがたいなあ、こんなにやさしい課長がきてくれて,オークリー アウトレット。前任の森川課長にはずいぶんいじめられました。健一は声を落した。「いじめられたって、どんなふうに」「ぼくのやることに一々干渉するんです。自主性をもたせてくれない。うるさくてたまらなかったです。ああいう人っているんですね。ぼくが専務の息子なので、必要以上に辛《つら》く当らずにはいられないんです」 お坊ちゃまは自主的判断ができない。些細なことまで一々指示をあおぎにくる。 前任者の森川のことばを島崎は思い出した。健一の自主性に関して、本人と森川はまったく正反対の見解をもっている。本人の自己診断は当てにならないのが通例である。森川のいうことのほうを、島崎は信じるべきなのだろう。「おれ、一々こまかく干渉されると、弱いんです。いらいらしてヤル気がなくなる。信頼して自由にさせてもらうほうが、ファイトが湧きます。課長、その線でやらせてもらえないでしょうか」「歓迎だな。大いに創意工夫を働かせてやってもらいたい。このあいだのクレーム処理なんかも、一々おれの意見をきく必要はなかった。好きにやるべきだったんだ」「前任の課長にいわれたんです。放っておくとおまえは暴走するおそれがある。マメに相談にこいって」「森川もきみを一人前にしようと思って必死だったのさ。要するに呼吸が合わなかったんだ。あいつは誠実で実行力もある。-------------------------------------------------------?mod=viewthread&tid=328134&pid=381032&page=1&extra=page=1#pid381032
?mod=viewthread&tid=563&pid=1301&page=1&extra=page=1#pid1301
?mod=viewthread&tid=65397&pid=85858&page=1&extra=page=1#pid85858